「暗室作業」といっても、リアル暗室ではなく、デジタル時代の暗室は「Photoshop」です。
画像処理ソフト、Photoshop以外にも各種ありますが、その差はリアル引き伸ばし機に例えるならば、私なんぞが若い頃使っていたラッキーの引き伸ばし機と高値の花で買えなかったダーストやオメガ、べセラーの高級引き伸ばし機位の差があります。
Photoshop、使い方やテクニックの解説本が出ています。やっぱり若い人の方が上手に使いこなす割合が多いですが、オジサンだって使える領域はあります。
今日の、Photoshop作業は、自分でするしかない領域とオジサンでもできる覆い焼と焼き込みです。
先日、JCIIフォトサロンで、奈良原一高さんの「暗室ノート」が展示されていました。展示されていたページを見ると、1枚のプリントをするために、大変な作業をなさっていました。
その作業は、本日の作業と同じ。
奈良原さんはアナログでマスクを作って、露光時間を調節して作業をなさっていました。それに代わり。Photoshopはデジタルでマスクを作ります。
奈良原さんの時代に、Photoshopがあったら、上手に使われるだろうな~
奈良原さんの暗室ノートを拝見したら、Photoshopの作業だったら、何重にもレイヤーができてしまいます。
Photoshopは簡単にやり直しがきくし、結果もすぐわかります。
アナログのプリントだったら、プリントも現像液の温度管理だけでも大変です。
それに比べて今日の私の作業は、覆い焼と焼き込みだけ。Photoshopのレイヤー2枚だけです。
レイヤーの露光量1は覆い焼、影1は焼き込みです。
プリントも簡単です。暗室でプリントした方ならおわかりになると思いますが、今のプロ用インクジェットプリンターで、良いペーパーを使ってプリントしたプリントと同じレベルのプリントを暗室で作ろうと思ったら大変です。
下手ながらも自分でPhotoshop作業した「自分でするしかない領域」とは、誰にも邪魔されない自分の作品だからです。
フィルム時代、私の育った広告写真の世界では、モノクロ写真の撮影後の作業、現像、プリントは全て外注でした。効率と、いつプリントをお願いしても同じ品質を求めるためです。餅は餅屋です。
モノクロは白から黒までで表現するのですから、カラーより大変なのです。
それでいて、なぜ外注でOKかというと、広告の表現の最終目的は印刷です。その為には、ある種のスタンダードがあるので広告用のモノクロはその幅に入っている必要があり、モノクロ専門のラボは仕上がりをその範囲に入れてくれます。
とはいえ、最高級の仕上がりが必要な時は、撮影前に撮影対象、条件(スタジオかロケ)と使いたいフィルムをモノクロラボに相談して、指定された撮影感度で撮影していました。(トライXだってISO400とは限らないのです。)
お願いするモノクロラボは、品質によって松・竹・梅とクラス分けして3つありました。
当時の最高級ラボは、西麻布にあった久保さんでした。今は、久保さんはアマナサルトで活躍中です。
フリーになって、モノクロの仕事が来た時に「上手い、高い、遅い」でもかまわない時は、久保さんにお願いしていました。
独立して、新しい仕事として婦人誌でモノクロ数ページでタレントさんを何号か撮影するようになり、その場合は別でした。
フィルム現像は久保さんにお願いしましたが、プリントだけは自分でしました。
広告のモノクロ表現と違い、雑誌の場合は自由だったので、自分の表現をしようと思えば自分でプリントするしかないのです。
スタジオに臨時暗室をつくり、プリントをしたものでした。
こんな事を思い出しながらのPhotoshop作業は楽しいです。
結果です。
左は何もしていないプリント。
右は、覆い焼と焼き込みをした後のプリントです。